テーマ

地の家 Earth House

テーマは「地の家(Earth House)」です。

大地の大らかさ,自然との調和は,さまざまなスケールの分断がもたらされている現代にこそ大切な視点だと思います。しかし近年の情報社会やパンデミックは,私たちがそうした雄大な大地や自然の中に生きていることを意識する機会を減少させているのではないでしょうか?

たとえば,フランク・ロイド・ライトは,環境の異なるふたつの大地に建つスタジオ,タリアセン・イーストとウエストを行き来し,さらに大地との接続を強く意識したプレーリーハウスをつくりました。では現代においては,どのような家が考えられるでしょうか?

また,「地」を考えることは土木やインフラに考えを巡らせることでもあります。一般的に,集まって暮らすために,道路や上下水道などのインフラを構築し,維持し続ける必要がありました。しかし,昨今のインフラの老朽化や多発する災害を考えると,たとえば,モンゴルの遊牧民のゲルのようにインフラに頼らない家も考えられるかもしれません。

西洋では,「地」は万物を構成する4つのエレメントのうちのひとつとして位置付けられ,中国や日本では,天地という言葉が世の中や全世界を意味し,その根源的な意味合いから地力や地肌のように,「素」の状態を指しています。

「地(Earth)の家(House)」を通して,私たちや私たちの暮らしを成立させている原点に立ち返り,新しい家の可能性を描いて下さい。みなさまのご応募をお待ちしています。

結果発表

結果発表

作品講評

作品講評

西沢立衛審査委員長

今年も面白い案が多く集まった。中でも諸江・半田案(1等)は、縮小地球上に建設される家で、水平垂直の家でありかつ曲面の家でもある。その独創的なアプローチが、全応募案の中で飛び抜けていた。

岩穴口・平出案(2等)は、地球に食い込んだ球体状の家で、その形状によって地中の音響が集まる。ロマンチックで壮大な発想が評価された。忠田・山口案(3等)は、コンクリートの街の中に咲く花や雑草を通して、街全体を生者と死者の鎮魂空間に読み替える案で、これもアプローチの独自性が評価された。

石田・津田・古田・矢部・山﨑・二宮案(佳作)は、島の採掘場跡地を貯水地に再活用する案で、産業遺産と歴史、自然への視点が評価された。藤村案(佳作)は、世界中の自然や遺跡が集約する都市の提案で、ヴィラ・アドリアーナの世界を現代的かつ巨大化して再現した。山口案(佳作)はその寓話性が高く評価されたが、どういう物語なのか今ひとつ理解できなかった。

WEIHAO YIN案(佳作)もSF的な世界で、詳細は分からなかったが、大小スケールにまたがる広がりに魅力を感じた。織田案(佳作)は、大通りを弾性舗装にして、公園のような空間に変える提案で、単純さが評価された。菅案(佳作)は、砂漠で雨水を集める家で、その浮遊感と現象性が評価された。ALEKSEI SHEKHOVTSOV案(佳作)は、庭を育てる家で、家と庭の愛らしい関係が印象的な案だ。佐藤案(佳作)は、単純かつロマンチックな案だ。

平田晃久審査委員

「地の家」というテーマに率直に取り組もうとすると、どうしても既視感のある考え方に行き着いてしまう。その難しい題に、思わずハッとさせられるような応答を示した案に出会えたのは、とても刺激的な経験だった。

いくつかの提案は、「地面」というものが揺らぎなく存在するものではないという事実そのものを、コンセプチュアルに示した知的な試みであった。諸江・半田案(1等)は、地球という球体の上に建つ建築を、平面図によって揺らぎなく表すことの不確かさを、緻密な描写によって可視化している。その独特の密度と美しさが紙面でどこまで伝わるだろうか。

藤村案(佳作)は、地球上のさまざまな場所が隣接して並ぶ「あり得ない地図」を描き出す。謎めいた提案だが、頭の中にそんな非現実的な経験が立ち上がる。まさに「場所とは何か」「地とは何か」という問いを呼び覚ます地図と言える。

地面との交信を形にしようとする提案も印象的だった。岩穴口・平出案(2等)は、地面が無数の層のせめぎ合いで成り立ち、常に多様な音を発しているという考えを、受信機でありスピーカーでもある繊細なガラスのすり鉢によって表現する。 忠田・山口案(3等)は、岡山空襲跡地に咲く小さな花々の「家」を描き、地面の記憶との交信を思わせる。

また、石田・津田・古田・矢部・山﨑・二宮案(佳作)は島の採石場跡地にため池のランドスケープを築き、その堤防として機能する住宅を提案する。体験してみたくなる雄大な風景である。織田案(佳作)は「道路もまた地面である」という当たり前の事実を再認識させてくれる。ニューデリーの風景に着想を得たというが、自動運転などの技術が進めば、実現し得るような不思議なリアリティを帯びていた。

吉村靖孝審査委員

諸江・半田案(1等)は、それ以外の案がちょっとした言葉の出現によって上下を繰り返す中にあって、不動の1位であった。メルカトル図法などよく知られた地図の書き方をテコにして、建築を特定の敷地から解放し、世界の見方そのものへと接続してみせる。

その射程の長さこそ、今回の提案で際立っていた点である。投影法が変わるたびに建築の輪郭が歪み、同じものが別様に読めてしまう。建築の可塑性と抽象性を同時に扱い、空間それ自体を「思考のメディア」として提示した点に、他案とは一線を画す強度があった。 岩穴口・平出案(2等)は地層の細密な描写を通して、それに寄り添う立場を取る。鍵となるのは音である。目を凝らすと地層のように描かれているものが実は音だと気付く。積層する土壌や石やコンクリートのテクスチャを読み解き、人間の営みをその一部として捉え直す態度には、今日的な倫理観がにじむ。

忠田・山口案(3等)はさらにスケールを縮め、路傍の花というもっとも小さな生命へと焦点を合わせる。岡山大空襲から復興する都市の隙間に宿る微細な気配を拾い上げ、小さな装置として具体化する姿勢は詩的である。複数の装置/建築が並べられており、それぞれが神を感じさせるのも良い。 今回の3等までの案は、地球規模から地中、そして路傍へとスケールをずらしながら〈地〉を読み替える試みとも言える。そのなかで諸江・半田案(1等)は、建築の可能性を一挙に地球の表象へと開いた点で、もっとも新しい視座を提示した。

羽鳥達也審査委員

「地」という具体性の強いテーマが影響したのか、提案のバリエーションは多くなかったが、対照的に思索の深い提案が多く見られた。地面を掘る提案は最も多かったが、佐藤案(佳作)の大地に向き合いながらも焚火のように日光を感じる家の断面構成にはさらに発展できる可能性を感じた。

場所を特定して深刻なインフラの問題を取り上げた石田・津田・古田・矢部・山﨑・二宮案(佳作)や、土地の歴史に焦点を当てた忠田・山口案(3等)はこれまでこのコンペにはあまり見られない具体的な提案であった。特に忠田・山口案(3等)の祈りが地に強く関係しているという視点にはハッとさせられた。確かに人は祈るとき大地に向かう。また、皮膚や樹木の断面のような大地の複雑さをテーマにしたものも多かった中で、地中の音に着目した岩穴口・平出案(2等)は、地下鉄や水脈のみならず、大地が発する振動や磁場なども想像させることに繋がる着想であり、その表現もそれを説明的でなく伝える秀逸なものと思えた。

地図をテーマにしたものも多かった中で、諸江・半田案(1等)はその不完全さとその可能性に着目し、地をテーマとしながらも、われわれが盲目的に信頼してきた図面というものの虚構性を暴き、それを通じて「建築」そのものの不完全さとその可能性に言及している点が非常に秀逸であると感じた。いずれも具体的な地という対象に向き合う中で、現実に深く潜む認識すべきことに到達し、それぞれが当人でしかできない方法でそれを表現されていたことが素晴らしい。その出現に立ち会えたことに感謝したい。

藤村龍至審査委員

「地の家」という題に対し、今年は地を「測る」「聴く」「撫でる」といった多様な身体性が現れた。諸江・半田案(1等)は無数の地図投影法によって地球そのものを仮想的に俯瞰し、地は敷地ではなく、常に像を変え続ける流動的な平面であることを示した。

岩穴口・平出案(2等)は断面方向へ沈潜し、無数の細線によって地中の層理を仮想的に描くことで大地の時間を可視化した。地表面には地を聴くための器としての球体を配置したのも詩的である。忠田・山口案(3等)は日常にアスファルトの隙間に咲く花に空襲の犠牲者たちの精霊を呼び寄せ記憶装置としての「地の家」を立ち上げた。いずれも仮想的な視点や空間として「地」を扱うのが特徴である。

佳作の作品群には地形的スケールを扱う一群があり、道路の空間を読み替える織田案(佳作)などは、地表の連続面そのものが家となり得ることを示す。蜘蛛の巣屋根で水を集める菅案(佳作)、庭師の水塔を家化したALEKSEI SHEKHOVTSOV案(佳作)、地中の光を丁寧に追う佐藤案(佳作)など、地の扱い方の多様性が示された。石田・津田・古田・矢部・山﨑・二宮案(佳作)やWEIHAO YIN案(佳作)のように崩れや採掘跡といった傷付いた「地」から出発する案、藤村案(佳作)や山口案(佳作)は「地」への人為的な介入そのものを批判するような姿勢も印象に残った。

鉄とコンクリートによって「地」への人為的な介入を進めてきた反省が、新しい建築への動機となって「木」や「土」、そして「水」への関心と繋がっていることが読み取れたように思う。これらを単なる材料の問題にせず、新しい建築の像とする試みに共感した。

受賞作品展示会

受賞作品展示会

会場 建築会館ギャラリー
所在地 〒108-8414 東京都港区芝5丁目26-20 建築会館 1F
展示期間

2026年2月  9日(月)12:00~19:30

2026年2月10日(火)9:00~19:30

2026年2月11日(水)9:00~19:30

2026年2月12日(木)9:00~16:00

ウェブサイト https://www.aij.or.jp/

賞金

賞金

  • 1等
  • 1点
  • 100万円
  • 2等
  • 1点
  • 50万円
  • 3等
  • 1点
  • 30万円
  • 佳作
  • 8点
  • 各10万円
総額260万円|全て税込

スケジュール

スケジュール

応募登録開始
作品受付開始
応募登録終了
作品受付終了
結果は入選者に通知いたします
2025年11月19日(水) 表彰式
2026年1月   『新建築』2026年1月号で発表いたします

応募要項

応募要項

全て展開

登録方法

インターネットにて登録の場合は、本サイトの登録フォームよりご登録ください。


官製ハガキにて登録の場合は、下記作品送付先までご登録ください。


FAXにて登録の場合は、03-5244-9338までご登録ください。



  • インターネット登録には、「KENCHIKU」サイトのID・パスワードが必要となります。お持ちでない方は、ID・パスワードを登録後、本コンペの登録を行ってください。
  • 官製ハガキとFAXにて登録の場合「日新工業建築設計競技係」と明記し、住所、氏名(ふりがな)、年齢、電話番号、勤務先あるいは学校名(学年)、所在地、電話番号、e-mailアドレスを書き添えてお申し込みください。
  • ご登録いただいた方には登録票をお送りいたします。
  • 複数の作品を応募する場合は、作品ごとに登録してください。
  • 登録のお問合せ:日新工業建築設計競技事務局|03-5244-9335

用紙

A2サイズ(420mm×594mm)の用紙(中判ケント紙あるいはそれに類する厚紙)1枚におさめること。模造紙等の薄い用紙は開封時に痛む恐れがあるので避けること。ただし、パネル化・額装は不可。

提出図面

配置図・平面図・立面図・断面図、透視図・模型写真など、設計意図を表現する図面(説明はできるだけ図面のみですること。各図面の縮尺は自由)。表現方法は、青焼、鉛筆、インキング、着色、写真貼付、プリントアウトなど自由。

登録番号の記載 & 登録票

提出方法 & 作品送付先

下記へ送付してください。


日新工業株式会社「日新工業建築設計競技係」[必ず明記のこと]

〒120-0025 東京都足立区千住東2-23-4

TEL:03-3882-2613


  • 持込み、バイク便は不可。
  • 開封時に痛みやすいため、円筒状の梱包はご遠慮ください。

その他

  • 応募作品は未発表の作品に限ります。
  • 本設計競技の応募作品の著作権は応募者に帰属しますが、入賞作品の発表に関する権利は主催者が保有します。
  • 応募作品は返却いたしません。
  • 同一作品の他設計競技との二重応募は失格となります。
  • 応募作品の一部あるいは全部が、他者の著作権を侵害するものであってはなりません。また、雑誌や書籍、Webページ等の著作物から複写した画像を使用しないこと。著作権侵害の恐れがある場合は、主催者の判断により入賞を取り消すことがあります。
  • 入賞後に著作権侵害やその他の疑義が発覚した場合は、すべて応募者の責任となります。
  • 入賞後の応募者による登録内容の変更は受け付けません。
  • 応募に関する費用(送付・税金・保険など)は、すべて応募者の負担となります。
  • 課題に対する質疑応答はいたしません。
  • 規定外の問題は応募者が自由に決定すること。

審査委員

審査委員

後援

2025年10月1日
応募登録終了