一等
尺田可規海老原建築設計事務所 22歳
人間と水の対話は人間の歴史とともに続いています。水は無心に、その性質のまま自然に流れ、降り、留まり、湿らせているのですが、人間にとってはそれが、ときには友となり、ときには手強い敵となります。
清らかに流れるせせらぎの音は耳に快く響き、その情景は心をなごませてくれます。しかしいったん、洪水や怒涛となると人間を恐怖におとし入れます。また、そぼ降る雨はそこはかとない情感をかき立てますが、豪雨は心配の種をもたらします。空気の湿度も、ある点を境に、快く感じたり不快に感じたりします。あり過ぎて困り、なくて困る。人間にとって水のバランスのとれたあり方というのが、そこにありそうです。
こうした水の性質を熟知して常に水を人間の味方に引きとどめておくことが必要なのです。住空間に入り込んでくる水は、3つの性質に分類できそうです。第1は生活に必需の水で台所、洗面所、浴室、便所、ユーティリティなど、ウォーター・セクションと呼ばれるところで使われる水です。第2は生活にうるおいと豊かさ、楽しさをあたえてくれる水で、池、水槽、プール、つくばい、雨、せせらぎ、滝など感覚にうったえてくる水です。第3は雨もり、湿気、結露など、迷惑な水です。そして同じ水が、状況によってすぐ他の性質に変わっていきます。
こうしたいろいろな側面を持つ水を、住空間のなかで如何にデザイン的にも生かしたものとしてあつかって行くかが、今回の課題です。
対象とする住空間としては、独立住宅、集合住宅、別荘など、いずれでもかまいません。また、住空間の一部での水の生きている様を提示するものであってもよいと思います。規模、構造、使用材料などは各自の自由想定とします。イメージあふれる応募案を期待しています。
審査委員長 | 芦原 義信 | 東京大学教授 |
審査委員 | 西沢 文隆 | 坂倉建築研究所長 |
審査委員 | 池原 義郎 | 早稲田大学教授 |
審査委員 | 林 昌二 | 日建設計東京事務所副代表 |
審査委員 | 宮脇 檀 | 宮脇檀建築研究室長 |
審査委員 | 土橋 隆 | 日新工業社長 |