一等
鵜飼聡日本大学 22歳
遠藤一登美AIU建築事務所
日本の文化は、その風土に固有な春夏秋冬に富んだ四季によって育まれてきた。美術、文学、音楽、衣装、料理、そして建築も、四季の移り変わりに対応したなかで成熟してきたのである。「住まいは夏を旨とすべし」と書かれた方丈記は、字句通り夏だけのことを考えて住まいをつくればよいということではなく、四季に恵まれた日本の風土に醸成されるべき住文化の質を、一言で述べたものと読みとるべきであろう。
そして現代、科学技術発達の恩恵を受けて、あらゆる季節を通じて屋内環境の快適さは得られるようになったが、反面、失われたものもあったのではなかろうか。四季折々の旬の食べ物との新鮮な出会い、衣替え、煤払い、さまざまな節句の行事など、季節感を味わいながら日々の生活を新たに迎えていた充実感を、今日のわれわれは見失ってはいないだろうか。また庭に植えられた木々に新芽が出、緑濃くなり、やがて紅葉し、そして落葉する。そうした何気ない自然界の輪廻に日常的に接することで、人々は、人間を含む自然の摂理を感じ取っていたのではなかったであろうか。
花鳥風月を優雅に楽しむ昔の住環境は、現在求むべくもない。しかし厳しい環境条件のなかで住まいを、求めざるを得ない現代でも、四季を感じる住まいをつくり出すことはできるはずである。街なかのタウンハウスであれ高層マンションであれ、それを求める生活者の願いと、それを考案する建築家の知恵があれば。
屋外環境と室内環境を区別する考え方ではなく、木々の草花、住まいを構成する材料の素材感や肌合いまでを含め一体として考えることも、そのひとつの方法であろう。また水の音ひとつで、四季それぞれの違いを感じさせることもできるはずである。どのような条件の下でも、求められ、それが望ましいと考えられるならば、建築家としてそれに応えなければならない。四季を感じることにより豊かな生活を送り得る住まいをつくることは、今、建築家の務めである。なお、敷地、規模、構造などは課題の趣旨を生かすかたちで、各自自由に設定して下さい。
鈴木邦彦明治大学 23歳
大嶋真粧美明治大学 22歳
吉田睦生明治大学 22歳
仲松直人明治大学 23歳
後村学明治大学 23歳
金森克己明治大学 22歳
沓沢属明治大学 23歳
森元則明治大学 23歳
審査委員長 | 芦原 義信 | 武蔵野美術大学教授 |
審査委員 | 大高 正人 | 大高建築設計事務所所長 |
審査委員 | 黒川 紀章 | 黒川紀章建築都市設計事務所所長 |
審査委員 | 宮脇 檀 | 宮脇檀建築研究室所長 |
審査委員 | 相田 武文 | 相田武文設計研究所所長 |
審査委員 | 土橋 隆 | 日新工業社長 |