課題

四季を感じる住まい

課題文

日本の文化は、その風土に固有な春夏秋冬に富んだ四季によって育まれてきた。美術、文学、音楽、衣装、料理、そして建築も、四季の移り変わりに対応したなかで成熟してきたのである。「住まいは夏を旨とすべし」と書かれた方丈記は、字句通り夏だけのことを考えて住まいをつくればよいということではなく、四季に恵まれた日本の風土に醸成されるべき住文化の質を、一言で述べたものと読みとるべきであろう。
そして現代、科学技術発達の恩恵を受けて、あらゆる季節を通じて屋内環境の快適さは得られるようになったが、反面、失われたものもあったのではなかろうか。四季折々の旬の食べ物との新鮮な出会い、衣替え、煤払い、さまざまな節句の行事など、季節感を味わいながら日々の生活を新たに迎えていた充実感を、今日のわれわれは見失ってはいないだろうか。また庭に植えられた木々に新芽が出、緑濃くなり、やがて紅葉し、そして落葉する。そうした何気ない自然界の輪廻に日常的に接することで、人々は、人間を含む自然の摂理を感じ取っていたのではなかったであろうか。
花鳥風月を優雅に楽しむ昔の住環境は、現在求むべくもない。しかし厳しい環境条件のなかで住まいを、求めざるを得ない現代でも、四季を感じる住まいをつくり出すことはできるはずである。街なかのタウンハウスであれ高層マンションであれ、それを求める生活者の願いと、それを考案する建築家の知恵があれば。
屋外環境と室内環境を区別する考え方ではなく、木々の草花、住まいを構成する材料の素材感や肌合いまでを含め一体として考えることも、そのひとつの方法であろう。また水の音ひとつで、四季それぞれの違いを感じさせることもできるはずである。どのような条件の下でも、求められ、それが望ましいと考えられるならば、建築家としてそれに応えなければならない。四季を感じることにより豊かな生活を送り得る住まいをつくることは、今、建築家の務めである。なお、敷地、規模、構造などは課題の趣旨を生かすかたちで、各自自由に設定して下さい。

結果発表

一等

鵜飼聡日本大学 22歳

遠藤一登美AIU建築事務所

二等

黄向明同済大学 23歳

王慧同済大学 20歳

二等

森徹鹿島建設 35歳

三等

岡田哲史早稲田大学 23歳

三等

熊倉高志日本大学 23歳

三等

神主洋一日東設計事務所

佳作

関朋一早稲田大学 24歳

佳作

渡部恵輔千葉大学 22歳

佳作

渡部靖豊橋技術科学大学 22歳

伊藤豪則豊橋技術科学大学 24歳

神谷光昭豊橋技術科学大学 22歳

佳作

鈴木邦彦明治大学 23歳

大嶋真粧美明治大学 22歳

吉田睦生明治大学 22歳

仲松直人明治大学 23歳

後村学明治大学 23歳

金森克己明治大学 22歳

沓沢属明治大学 23歳

森元則明治大学 23歳

佳作

佐藤英幸東京理科大学 25歳

佳作

沼原健二芝浦工業大学 23歳

佳作

山田雅史日本大学 24歳

佳作

古河原康正エーディーネットワーク

佳作

鈴木幸平AS建築設計事務所 26歳

佳作

前田勝馬TOPU一級建築事務所 24歳

甘粕雄治フリーデザイナー 24歳

笠井美弥織物作家 26歳

賞金

  • 1等[1点]
  •  
  • 100万円
  • 2等[2点]
  •  
  • 各30万円
  • 3等[3点]
  •  
  • 各10万円
  • 佳作[10点]
  •  
  • 各5万円
全て税込

審査委員

審査委員長 芦原 義信 武蔵野美術大学教授
審査委員 大高 正人 大高建築設計事務所所長
審査委員 黒川 紀章 黒川紀章建築都市設計事務所所長
審査委員 宮脇 檀 宮脇檀建築研究室所長
審査委員 相田 武文 相田武文設計研究所所長
審査委員 土橋 隆 日新工業社長