課題

現代の茶室

課題文

茶の湯はもともとコミュニケーションの手だてであった。ひとたび茶室の踊り口をくぐると、そこは身分の隔てのない世界であることを理想とした。天下人も一介の町人も、お互いひとりの人間として自由な話し合いができる場が茶室なのであった。
茶室空間はそのどんな細部も、また小さな道具ひとつに至るまで、極めて洗練されたものであった。そうした場での人間と人間との出会いは、感性を高め、精神を高揚させずにはおかないものがあったであろう。後生、その洗練さを保つために、儀式化、様式化、作法化された茶の湯であるが、それもそもそもは、高いレベルでの自由な精神と場を獲得するための手続きなのであった。
身分の上下が消滅した現代、人と人との出会いに煩雑な手続きは必要なくなっているであろう。しかし本当に人と人とが、純粋に人間同士として話し合える場が、現代に存在しているであろうか。一期一会の精神が現代に生きているであろうか。
そう固苦しく考えなくとも、茶の初心、つまり対等なコミュニケーションの場として茶室を甦らせることは、現代社会にとっても意義あることと考えられる。踊り口をくぐるまでもなく、対等に自由に話し合うことのできる現代の茶室をつくり出そうではないか。
それは独立した本来の茶室を粧ってもよいし、住宅の中、ビルの中の一室あるいは数室であってもよい。また公園の中など公共空間に設けられるものであってもよい。材料や構造、平面計画も、現代の茶室の意義を表現するものであるならば、自由に選択、構成してよい。
創造力豊かな応募案が寄せられることを期待している。

結果発表

一等

平井久子早稲田大学 27歳

二等

藤本裕之横浜国立大学 23歳

二等

張漢陵重慶建築工程学院建築系 24歳

三等

段煉孺京都府立大学

林琇春京都工芸繊維大学

三等

保科文紀清水建設設計本部 28歳

鈴木健夫清水建設設計本部 28歳

三等

間瀬実郎豊橋技術科学大学 22歳

佳作

伊藤ていじ工学院大学教授

佳作

福山博之明治大学 23歳

佳作

池亀桂介池亀建築設計事務所 24歳

佳作

前田伸治高橋成典設計事務所 22歳

佳作

李舒重慶建築工程学院建築系 24歳

佳作

堀江幸治岡設計 28歳

佳作

勝山真東京理科大学 23歳

佳作

稲垣雄二岡設計 32歳

佳作

木村拓DEN住宅研究室 22歳

佳作

利田純一横浜国立大学 24歳

賞金

  • 1等[1点]
  •  
  • 100万円
  • 2等[2点]
  •  
  • 各30万円
  • 3等[3点]
  •  
  • 各10万円
  • 佳作[10点]
  •  
  • 各5万円
全て税込

審査委員

審査委員長 芦原 義信 武蔵野美術大学教授
審査委員 大高 正人 大高建築設計事務所所長
審査委員 黒川 紀章 黒川紀章建築都市設計事務所所長
審査委員 宮脇 檀 宮脇檀建築研究室所長
審査委員 相田 武文 相田武文設計研究所所長
審査委員 相臺淳吉 日新工業社長