課題

水の手の家

課題文

茶の湯はもともとコミュニケーションの手だてであった。ひとたび茶室の踊り口をくぐると、そこは身分の隔てのない世界であることを理想とした。天下人も一介の町人も、お互いひとりの人間として自由な話し合いができる場が茶室なのであった。
茶室空間はそのどんな細部も、また小さな道具ひとつに至るまで、極めて洗練されたものであった。そうした場での人間と人間との出会いは、感性を高め、精神を高揚させずにはおかないものがあったであろう。後生、その洗練さを保つために、儀式化、様式化、作法化された茶の湯であるが、それもそもそもは、高いレベルでの自由な精神と場を獲得するための手続きなのであった。
身分の上下が消滅した現代、人と人との出会いに煩雑な手続きは必要なくなっているであろう。しかし本当に人と人とが、純粋に人間同士として話し合える場が、現代に存在しているであろうか。一期一会の精神が現代に生きているであろうか。
そう固苦しく考えなくとも、茶の初心、つまり対等なコミュニケーションの場として茶室を甦らせることは、現代社会にとっても意義あることと考えられる。踊り口をくぐるまでもなく、対等に自由に話し合うことのできる水の手の家をつくり出そうではないか。
それは独立した本来の茶室を粧ってもよいし、住宅の中、ビルの中の一室あるいは数室であってもよい。また公園の中など公共空間に設けられるものであってもよい。材料や構造、平面計画も、水の手の家の意義を表現するものであるならば、自由に選択、構成してよい。
創造力豊かな応募案が寄せられることを期待している。

結果発表

一等

宮宇地一彦法政大学工学部建築学科講師 44歳

塚本章二法政大学工学部建築学科

山田英俊法政大学工学部建築学科

山本昌広法政大学工学部建築学科

竹沢圭一法政大学工学部建築学科

名古屋孝徳法政大学工学部建築学科

二瓶渉法政大学工学部建築学科

二等

西村紀一多摩美術大学芸術学部建築科 22歳

二等

張漢陵重慶建築工程学院建築系 25歳

三等

池田偉佐雄URU総合研究所 23歳

三等

織田厚嗣武蔵工業大学大学院 24歳

三等

正本義人芝浦工業大学大学院 23歳

佳作

伊藤寛早稲田大学大学院 31歳

佳作

加藤哲也TAKASAKI物人研究所 25歳

佳作

古河原康正エーディーネットワーク 38歳

佳作

陳弘武漢水利電力学院建築系助教 25歳

佳作

小松原辰弥明治大学大学院 23歳

佳作

深谷友善芝浦工業大学大学院 24歳

佳作

朴健大阪芸術大学建築学科

藤田俊朗大阪芸術大学建築学科

山下英至大阪芸術大学建築学科

橋本範文大阪芸術大学建築学科

西崎寿志大阪芸術大学建築学科

樋口圭大阪芸術大学建築学科

高橋章夫大阪芸術大学建築学科

松富謙一大阪芸術大学建築学科

佳作

松畑強日建設計東京本社 26歳

佳作

松本博樹九州芸術工科大学

森裕九州芸術工科大学

佳作

李舒重慶建築工程学院建築系 25歳

賞金

  • 1等[1点]
  •  
  • 100万円
  • 2等[2点]
  •  
  • 各30万円
  • 3等[3点]
  •  
  • 各10万円
  • 佳作[10点]
  •  
  • 各5万円
全て税込

審査委員

審査委員長 芦原 義信 武蔵野美術大学教授
審査委員 大高 正人 大高建築設計事務所所長
審査委員 黒川 紀章 黒川紀章建築都市設計事務所所長
審査委員 宮脇 檀 宮脇檀建築研究室所長
審査委員 相田 武文 相田武文設計研究所所長
審査委員 相臺 淳吉 日新工業社長