一等
荻野喜之東京理科大学大学院 25歳
ペントハウスに住む、というイメージは、日本とアメリカでは全く逆である。
日本でのペントハウスのイメージは、ビルの屋上の防水床から建ち上がったエレベーター機械室で、人気のない荒涼とした感じである。もしそこに住むといったら、みすぼらしい仮住まいぐらいにしいか思えない。しかしアメリカでは、ペントハウスは最上の居住環境と考えられている。ミース・ファン・デル・ローエは自分で設計したレークショア・ドライブ・アパートメントのペントハウスに住んでいたし、ヒューストンのトランスコ・タワーや新しい香港上海銀行の例のように、ビルのオーナーが住まいとしていることも多い。なんといっても眺望は最高であるし、周囲の環境条件に煩わされることも少ない。
一方日本では雨が多く、地震もあり、万一エレベータが故障したらなどと考え、しかも庭の緑に囲まれて暮らすことを理想としていたので、いままでペントハウスに住むなどということは思いもしなかった。居住環境としては悪条件であるという概念が、定着してしまっていたのである。
しかし今日、日本でもマイナス要因となる条件はほとんどクリアされたとみてよい。屋上に土を乗せ、植物を植えて庭園をつくることは、流行ってすらいる。そうした認識の転換を受けて、最近ではペントハウスを住まいとして計画した例が見受けられるようになってきている。これからの都市のあり方にとっても、重要なことと考えられる。何故なら、過疎化する都心に人口を回復させるひとつの手だてとしても有効であろうし、都市のスカイラインに新しいインパクトを与えるものともなるからである。
今回のテーマは、そうした意味における「ペントハウスの住まい」である。
今日の日本の都市空間に残された貴重な未利用環境としてのペントハウスの意味を見直し、それを積極的に活用する計画とそのデザインを考えて欲しい。
そのペントハウスの住まいが設置される建物の種類や規模は問わない。既存の建物に付加的に設置するものでも、新築のビルにいっしょに計画するものでも、また単体であっても集合体であっても、応募者が自由に想定してよい。新しいタウン・ライフの創出を目指し、日本の都市生活に相応しいペントハウスの住まいが提案されることを期待している。
垣内昇大阪芸術大学 22歳
沖野光治大阪芸術大学 21歳
村田真一大阪芸術大学 22歳
安井亜矢子大阪芸術大学 20歳
山本謙吾大阪芸術大学 20歳
松川明彦大阪芸術大学 20歳
吉原久美子大阪芸術大学 20歳
吉岡敦大阪芸術大学 20歳
審査委員長 | 芦原 義信 | 芦原建築設計研究所所長 |
審査委員 | 大高 正人 | 大高建築設計事務所所長 |
審査委員 | 黒川 紀章 | 黒川紀章建築都市設計事務所所長 |
審査委員 | 山本 俊介 | 清水建設取締役設計本部長 |
審査委員 | 石山 修武 | 早稲田大学教授 |
審査委員 | 相臺 淳吉 | 日新工業社長 |