一等
鎌田泰寛室蘭工業大学入江研究室 23歳
多様化時代が人間生活にもたらしたものは、その生活範囲のダイナミックな振幅である。仕事のための余暇から仕事と同価値の余暇へ、さらには趣味からスポーツやレジャーまでもが、独立した価値ある目的として位置づけられるようになってきた。それを実現するための時間や経済的余地が持てるようになったからではあるが、同時に生活意識を大きく変革してきたのを見逃すことはできない。それまでは考えられなかったようなさまざまな人生観を持った人びとが出はじめてきたのである。
そのため当然、かつては上流社会のステイタス・シンボルとして避暑・避寒の社交場であったリゾートハウスの意味も変わってきた。より多くの人びとにとって、生活の場の拡張のひとつとして望み得るものになってきたのである。そして余暇を過ごす場ちった漠然としたものではなく、誰のためのリゾートハウスか、それぞれの使われ方が問われるようになってきた。まさに多様化時代である。
事実、さまざまな社会的地位や指向性を持った多様な人びとが、リゾートハウスを所有し、その生活を楽しむようになってきている。そうしたリゾートハウスを持とうという人の中には、世界的リッチマンもいれば、経済的には豊かでないがリゾート生活に心の豊かさを求める人生エンジョイ派もいよう。暇のない人や老人のためのリゾートハウスも、これからの時代のテーマとなるに違いない。
今回の課題は、そうした多様化時代のリゾートハウスである。
応募者は各自、リゾートハウスのオーナーとその家族を自由に設定し、そこで行われるであろうリゾート生活を想定して、その物語に相応しいリゾートハウスの設計をして欲しい。多様化のなかから何をひとつ選択するか、課題はそこからはじまる。そして人間にとって豊かさとは何かを考え、新しいリゾートハウスの意味をその設計に籠めてもらいたい。リゾート時代の明日を拓く創造力溢れる応募案を期待している。
審査委員長 | 芦原 義信 | 芦原建築設計研究所所長 |
審査委員 | 大高 正人 | 大高建築設計事務所所長 |
審査委員 | 黒川 紀章 | 黒川紀章建築都市設計事務所所長 |
審査委員 | 伊東豊雄 | 伊東豊雄建築設計事務所所長 |
審査委員 | 押野見 邦英 | 鹿島建設建築設計本部副部長 |
審査委員 | 相臺 淳吉 | 日新工業社長 |