課題

記憶の住む家

課題文

かつて家には記憶が住んでいた。 大黒柱のあるような家だけでなく、長屋にも、記憶が住んでいた。人びとの生活とともに大黒柱のあるような家だけでなく、長屋にも、記憶が住んでいた。人びとの生活とともに生じた喜怒哀楽は、柱の疵や隅の暗がりに染み込み、住み続けている人にはもちろん、代が替わっても、そこで行われていた生活が何であったのかを感じさせてくれた。生活の律を、その家に住む記憶が保持する役割を果たしていたのである。
そうした記憶は、また、神や仏に姿を借りて家に住んでいた。神棚、仏壇、荒神様、水神様など、単にアミニズムではなく、社会かされた記憶でもあった。それぞれに祈りを上げることは、それにまつわる記憶を呼び戻す作法でもあったのである。そして人間はひとりだけで生きているのではない明石を、日々の祈りのなかから感じ取っていた。
翻って現代、2DKのアパートに、あるいは近代化された手法によって設計された家に、記憶は住み得るであろうか。テレビの置くところはあっても、仏壇の置くところがないのが現代住宅である。新建材には歴史も汚れも染み込まない。ガスレンジに荒神様は相応しくないし、ステンレスとタイルの台所に水神様は似つかわしくない。生活が本当に潤いのある満たされたものになるには、記憶が宿る何かが必要なのではないだろうか。
今回の課題「記憶の住む家」は、現代の手法と材料によって、どのように記憶の住み得る家をつくることができるだろうか、という問いかけである。もちろんそれは、かつてのような家に戻れということではない。あくまでも前向きに、未来に向かって記憶が住み得るような家を考えて欲しいということである。多分そこには、過去の家とも現代住宅ともまったく違った様相のあり方が見られるに違いない。
イマジネーションに溢れる「記憶の住む家」の提案を期待している。

結果発表

一等

New Balance Network

中江研神戸大学大学院 22歳

馬場正尊早稲田大学大学院 23歳

二等

山口賢芝浦工業大学大学院 24歳

二等

安斎哲フリー 24歳

三等

藤森伝一信州大学大学院 24歳

大前智博信州大学 22歳

三等

高橋雅俊大阪大学大学院 22歳

槻尾輝雅大阪大学大学院 23歳

三等

稲富宏郎芝浦工業大学大学院 23歳

矢口秀夫芝浦工業大学研究生 24歳

佳作

Tom Corsellisベルラーヘインスティテュート

佳作

白石越郎関東学院大学大学院 23歳

佳作

呂佳謀九州産業大学大学院 29歳

岡鐵也九州産業大学 22歳

中井賢一九州産業大学 23歳

佳作

塩塚隆生アルカイック 27歳

有馬隆文(共同設計者)大分大学助手 27歳

佳作

山下剛鹿児島大学大学院 22歳

佳作

月田徹コロンビア大学大学院 30歳

佳作

野澤良太日本大学理工学部理工学研究所研究生 22歳

佳作

松原和雄早稲田大学大学院 23歳

佳作

関政晴明治大学大学院 23歳

田辺勤明治大学 24歳

松井哲雄明治大学 21歳

藤井健二郎明治大学 22歳

佳作

呉蔚中国 重慶市建築勘測設計研究院 21歳

賞金

  • 1等[1点]
  •  
  • 130万円
  • 2等[2点]
  •  
  • 各50万円
  • 3等[3点]
  •  
  • 各20万円
  • 佳作[10点]
  •  
  • 各10万円
全て税込

審査委員

審査委員長 芦原 義信 芦原建築設計研究所所長
審査委員 大高 正人 大高建築設計事務所所長
審査委員 黒川 紀章 黒川紀章建築都市設計事務所所長
審査委員 高松 伸 高松伸建築設計事務所所長
審査委員 横川 健 横川設計工房所長
審査委員 竹山 聖 京都大学助教授
審査委員 相臺 淳吉 日新工業社長