一等
田村圭介早稲田大学・24歳
ひょんなことから念願のわが家を傾斜地に建てることになった。家族は4人で子供はいま2人とも小学生。現在は都心の社宅に住んでいるが、いずれは家を建てたいと思っていた。たまたま不動産会社にいる大学の同級生と話をしているうちに、会社から1時間ぐらいのところに最近開発した分譲地のなかで、傾斜地の部分が残っていて格安だから見に来ないかと、誘われた。行ってみると低い丘陵地の一角で、向かいの斜面は市街地化調整区域となっている手つかずの緑があり、なかなか環境がよい。しかし肝心の敷地は取り付け道路に面しているほかは、かなりの傾斜である。建設費も高く付くだろうし、結局は高い買い物になってしまうかな、とためらったが、高校の同級生で建築家になっているのがいたことを思い出した。学生時代はかなり親しく付き合っていた友人である。電話をしてみると乗り気で、一緒に土地を見に行こうという。そして、ここは絶対いいぞ、周囲の環境を生かした素晴らしい住まいを考えてやるから、と強く勧められた。家族の健康や将来計画を考え、資金を工面してこの敷地を買い、ここに棲む決心をした。
今回の課題「傾斜地に棲む」は、こうした経緯でつくられることになった家である。あなたがその友人の建築家であるとしたなら、この傾斜地にどのような設計をするであろうか。敷地の条件や家族の性格、趣味などは自由に想定してよい。これからの時代と環境に対して建築家としての思想やコンセプトを明確に示し、このクライアントの時期に素晴らしいデザインをもって応えてもらいたい。
審査委員長 | 大高 正人 | 大高建築設計事務所所長 |
審査委員 | 黒川 紀章 | 黒川紀章建築都市設計事務所所長 |
審査委員 | 鈴木 了二 | 鈴木了二建築計画事務所 |
審査委員 | 芦原 太郎 | 芦原太郎建築事務所 |
審査委員 | 内藤 廣 | 内藤廣建築設計事務所 |
審査委員 | 相臺 淳吉 | 日新工業社長 |