一等
鈴木孝男フリー
石川孝広東北工業大学大学院
田中正挙東北工業大学
都市は人が住んでこそ都市である。しかも安心して快適に住めなければならない。日本ではバブルの時期、土地の価格が以上に上昇し、都市のなかに新しく住むことは容易ではなくなった。いや、それだけではなく、それまで住んでいた人も、高くなった相続税の負担に耐えられなくなったり、また地上げなどによって、郊外へ出ていく人が多くなった。これを都市の発展とみるのは過ちで、都市の崩壊なのである。業務施設や商業施設だけでは都市は成り立たない。人の住む都市を考えなければならないのである。
3世代住居はそうした状況に対応したひとつの智恵でもあった。敷地の細分化を避けると同時に、それまでの流れであった核家族から、世代の重層する家族形態への回帰をもたらすものであった。といってもそれは、家長を中心にしたかつての家族形態ではない。世代の分離とそのゆるやかな結合が、住居形態として求められた。それぞれでは完結していない家族を、お互いに補い合うあり方がそこに示されたといってもよい。
今回の課題「都心に住む3世代4家族」は、その考えをさらに敷衍した都市型住居のあり方を求めるものである。そこには双方の親が住むことも考えられるであろうし、敷地の広さに応じて兄弟姉妹の家族が集まることも考えられる。だからそれは、4世代であり5家族、6家族であってもよい。あるいは敷地が離れて存在していることも考えられるかもしれない。不特定な集合形態でなければ、血縁だけではない家族の集合であってもよい。都心に、敷地を細分化することなく快適に住み、人間関係も血縁での結び付きのような気のおけない関係であり、老壮若幼それぞれの人生が豊かに営まれる居住形態のあり方を考えてもらうのが、この「都心に住む3世代4家族」の意図するところである。また、敷地内での完結性だけでなく、近隣との関係やその住む都市との関係にまで思考を進展することができないであろうか。
新しい都市型住居のあり方について、実りある提案を期待している。
審査委員長 | 黒川 紀章 | 黒川紀章建築都市設計事務所所長 |
審査委員 | 鈴木 了二 | 鈴木了二建築計画事務所 |
審査委員 | 芦原 太郎 | 芦原太郎建築事務所 |
審査委員 | 内藤 廣 | 内藤廣建築設計事務所 |
審査委員 | 隈 研吾 | 隈研吾建築都市設計事務所 |
審査委員 | 相臺 淳吉 | 日新工業社長 |
コーディネーター | 馬場 w璋造 | 建築情報システム研究所 |