課題

耕す人の家

課題文

近代建築史にその名を残す住宅はすべて、たとえ田園や森のなかに建てられたものでも、その存在の根本において都市住宅であった、ということができる。なぜなら、それらは常に生活者との関係を問い直してきたものだったからだ。ここで、耕す人、さらには、きこり、漁する人、遊牧する人などの家を構想することは、近代住宅を改めて問い直し、そのオルタナティヴを見出そうとする試みなのである。
それは同時に、土地や地表のあり方を見直す作業ともなる。われわれの生活する地表は、生産と消費のための「都市」と、聖域としての「自然」の両極に分割されているのではない。たとえば、この国のいたるところに見かけられる宅地と農耕地が互いに背を向けて共存する悲劇的な風景を、快適な都市と公園に変貌させる物語の挿し絵を描くことはたやすいだろう。だがそうではなく、私たちすべての意識と存在の根底を揺さぶるようなイメージを描くことはできないだろうか。
それらはすべて、「耕す」という行為から人間の存在をとらえ直すことにつながるだろう。もちろん、耕す対象を物理的な大地から、より精神的なものへ、メタフィジカルなものへと敷えんさせることも可能だ。そのとき、「耕す人の家」は、大地と天空の物語に満ちた詩的な空間となることだろう。
そもそも「文化=culture」とは、「耕す=cultivate」ということではなかったか。人間とは、その存在の根本に置いて、耕す者なのである。
相違あふれる提案を期待する。

結果発表

一等

富沢正和早稲田大学 理工学研究科修士2年・24歳

二等

魚崎聡子フリー・38歳

二等

土屋拓馬フリー

三等

石川雅博小沢明建築研究室・30歳

行木かおる同・23歳

三等

田村飛鳥大阪工業大学大学院 建築専攻・23歳

三等

山本昌宏汎建築設計事務所・26歳

佳作

青山玲フリー・33歳

溝口智子フリー・32歳

佳作

小川博央日本大学大学院1年・23歳

佳作

鈴木隆太郎早稲田大学大学院 建築学専攻
入江研究室修士2年

佳作

藤野高志東北大学大学院建築学科
都市分析学研究室修士1年・22歳

佳作

宮崎達也フリー・22歳

佳作

寶神尚史明治大学大学院修士2年

佳作

中村拓志明治大学大学院修士2年・24歳

佳作

白石隆治広島工業大学環境学部環境
デザイン学科 水田ゼミ・22歳

佳作

岩本由佳芝浦工業大学大学院 曽根幸一環境設計研究室

小池公二同 研究補助員・26歳

佳作

山田航司清水建設(株)設計本部・25歳

賞金

  • 1等[1点]
  •  
  • 130万円
  • 2等[2点]
  •  
  • 各50万円
  • 3等[3点]
  •  
  • 各20万円
  • 佳作[10点]
  •  
  • 各10万円
全て税込

審査委員

審査委員長 香山 壽夫 建築家
審査委員 長谷川 逸子 建築家
審査委員 北川原 温 建築家
審査委員 岸 和郎 建築家
審査委員 佐野 吉彦 建築家
審査委員 相臺 公豊 日新工業株式会社社長
コーディネーター 馬場 璋造 建築情報システム研究所