一等
伊勢屋寛ニューヨーク州立大学大学院
William Gatesニューヨーク州立大学大学院
水は、生命の源泉であり、われわれの生活にとって欠くべからざるものである。水は大いなる自然の循環、そしてエコロジカルな循環を媒介している。今回の課題は、そんな水と共に生きる空間を問うものである。 思えば水のイメージは、われわれの身体の奥底に刻み込まれた水の記憶と絶えず共振している。たとえば夏。海岸や湖畔、川辺に、人は心惹かれる。水との触れ合い。それらはおしなべて、五感を通じた身体的なものであることに注目したい。 もちろん水がもらたらすのは、日常の恩恵だけではない。ときとして脅威ともなる。水を甘く見て手痛いしっぺ返しをこうむるのは、建築も同じである。しかし、現代の都市生活を振り返るとき、われわれは水からあまりにも隔離されているのではないか。管理され、飼い慣らされた水には、身体の記憶の扉を開くことはできない。 計画に当たって、具体的な建築の用途や規模、敷地は、応募者が自由に設定することができる。たとえば、住宅というテーマの中で解くことも可能だろうし、都市における人と水との触れ合いも考えられる。敷地は都市だけとは限らない。海や川、大自然の中にも求められよう。そのほかにもさまざまなアプローチが考えられる。 そしてまた、水琴窟や鹿おどしをはじめ、軒から滴る雨水さえも生活の中の楽しみとする文化が、われわれの背景としてあることも、忘れてはならないだろう。 応募者が提案する建築が、いかなる用途であろうと、人と水との原生的な関係を再生するものであってほしい。
審査委員長 | 香山 壽夫 | 建築家 |
審査委員 | 長谷川 逸子 | 建築家 |
審査委員 | 北川原 温 | 建築家 |
審査委員 | 岸 和郎 | 建築家 |
審査委員 | 佐野 吉彦 | 建築家 |
審査委員 | 相臺 公豊 | 日新工業株式会社社長 |