一等
花本大作広島工業大学大学院
暴風雨や大雪、洪水や震災といった自然の猛威は、人びとに思わぬ非日常を体験させる。電線が嵐に鳴る音や、激しく窓を叩く雨音、停電の蝋燭の炎に、恐怖や不安と裏腹の興奮を覚えたことはないだろうか、道を川に変え、樹木をなぎ倒し、われわれの日常の脆弱さを知らしめる嵐の光景もまた、不思議な感動を呼び起こす。
建築に求められるもっとも基本的な要件は、さまざまな外的脅威から人間を護る内部をもつことであるといってよい。家は住む人の命を危うくしてはならない。
しかし、嵐のなかに立つ建築は、ただじっと固く殻を閉ざし、嵐が過ぎ去るのを待つだけのシェルターであってよいのだろうか。嵐に対してより能動的であり、しなやかにその姿を変容させたり、嵐と同化してしまうような建築のあり方は考えられないだろうか。
ここでいう嵐とは、自然界における物理的な嵐にとどまらず、テンポラリーに訪れるある「激しさ」や「非日常」を意味するものである。建築はそれにいかに立ち向かい、あるいはいかに受け入れるのだろうか。「嵐」の意味をより敷衍して考え、さまざまな場面を想定し、その激しさや非日常もまた生活の楽しみと化すような新しい建築を構想してほしい。
審査委員長 | 香山 壽夫 | 建築家 |
審査委員 | 三栖 邦博 | 建築家 |
審査委員 | 北川原 温 | 建築家 |
審査委員 | 吉松 秀樹 | 建築家 |
審査委員 | 西沢 立衛 | 建築家 |
審査委員 | 相臺 公豊 | 日新工業株式会社社長 |